こんにちわ フランス語講師のブログAu hasard des lecturesへようこそ。
皆さんはこのrocambolesqueという形容詞をご存知ですか? 「奇想天外な」とか、「波乱万丈の」とか言う意味ですが、最近耳にした覚えはありませんか? そうなんです。先日のカルロス・ゴーン氏の逃亡劇を形容する言葉として、フランスのメディアではほぼ例外なくこの言葉が使われていましたね。これほどぴったりな形容詞は他になかったのでしょう。今日はこの単語についてお話ししたいと思います。
覚えられない単語どうやって覚えましょうか?
語学の学習には、どんどん新しい単語を覚えていかなければならないですが、どういうわけか、どうしても覚えられない単語ってありませんか?「あっ、この単語!」、どこかで見たことがあるはずなんですが、どうしても思い出せない。しかたなくもう一度辞書を開くと、「あっ、これこれ。前にも調べた!」となる単語です。1度や2度ならまだしも、それ以上同じことを繰り返すと本当に心が折れますよね。
私にとって “rocambolesque” はまさにそういう単語でした。
形容詞 ” rocambolesque”とは
この形容詞は19世紀の人気新聞連載小説の中の1人の登場人物の名前から来ています。その名もRocambole.
Qui est Rocambole ?
このRocambole 君、連載小説の開始当初は、実は主人公でもなんでもなかったのです。幼い頃から盗み、恐喝、殺人にまで手を染めた悪人という役どころで、登場人物の1人に過ぎなかったのです。
連載小説は大流行
ところがこの連載小説が大流行し、編集部にはありとあらゆる読者からの要望が届くようになります。それも “つぶやく” なんて生やさしいものではなかったようで、物語の筋や登場人物の設定までグイグイ入り込んで来たようです。作者も、連載ならではの締め切りに追われながら、なんとかそれらの要望に答えようとするうちに、当初の構成は完全に崩壊。重要人物が途中でいなくなったり、端役が重要人物になったりしてしまいます。
スピンオフ” Rocamboleの大冒険”
ついにはRocamboleを主人公とした新シリーズが始まるわけですが、その中でRocamboleは、昔の犯罪を悔い、強いものの横暴から弱者を助ける新しい時代のヒーローと化します。そしてまた、rocamboleを主人公とするスピンオフ、”les exploits de rocambole(ロカンボールの大冒険)が大流行するのでした。
このまさに奇想天外な人生を送った「”Rocambole”のような」、というのが 形容詞 “Rocambolesque”の意味なんですね。
もし興味があれば、YoutubeでLes Exploits de Rocamboleを見ることができます。昔の映画なので台詞回しも少し難しいですが、是非チャレンジしてみて下さい。
覚えられない単語には、尾ひれはひれつけてみる
さてどうでしょう? 1つの単語の意味に随分と長い説明をすることになりましたが、実はこれ、覚えにくい単語を覚える一つのテクニックなんですよ。一つの単語ってとても短いですね。そういう短いものが覚えにくければ、その単語の周りに、画像なり、例え話なり、なんでもくっつけて膨らませると覚えやすいそうです。今回は動画までくっつけてしまったちょっと極端な例ですが、ここまで読んでこられてどうですか? ”Rocambolesque”という形容詞、覚えちゃいましたよね。
繰り返すことも効果的です
覚えられない単語を覚えるもうひとつのテクニックはやはり地味に繰り返すことです。
今回のゴーンさんの逃亡劇を受けて、フランスではそれはもう毎日、そしてどの局でも、どの番組でも、どの新聞でも、どの記事でも、
rocambolesque! Rocambolesque !! Rocambolesque !!! Rocambolesque !!!
と、それはもうRocambolesque の大合唱でしたね。この1週間で滞仏30年間で聞いたのと同じくらい、いやそれに勝る回数の ROCAMBOLESQUE を聞いたと思います。もし私が学生の頃にゴーンさんが逃亡してくれていたら、あんなに苦労しなかったろうにと思うと、かなり悔しいです。
Si Carlos Ghosn s’était évadé à l’époque où j’étais étudiante,Je n’aurais pas eu autant de difficulté !!
条件法過去が苦手な方々向けにフランス語バージョンもつけてみました!!
便利な接尾語ーesqueについて
このーesqueという接尾語ですが、とても便利です。名詞の後につけるとなんでも「〜的な」という意味の形容詞になるんですよ。rocambolesqueのほかに、
- romanesque ( roman + esque 小説のような、小説のように素晴らしい)
- titanesque (Titan + esque タイターンのような、タイタンのように巨大な )
くらいは、皆さんご存知ですね。
絵画のように美しいという意味の pittoresque は、イタリア語で「絵画」を表す pittore + esque です。
ちょっと変わったところでは「悪夢」を意味するcauchemar と-esqueを合わせて「悪夢のような」とか、「悪夢のような」とかに使われます。
Et alors l’examen de rattrapage ? (追試どうだった?)と聞かれ、C’était cauchemardesque !と答えられれば、c’était difficileよりもずっと大変だった感が伝わりますね。
いかがでしたか? 新しい単語もなるべく楽しく覚えられるといいですね。皆さんも、-esqueの形容詞を色々探してみて下さい。因みに、このシステムで言葉遊びもできるんですよ。とにかく名詞に-esqueを付ければいいんです。jacksonesque(マイケルジャクソンのような), tarantinesque(タランチノ風の), tintinesque (タンタン風の)など、なんでもありです。 そのうち、Carlosesque とかGhosnesque とか出てくるかも知れませんね。